ベイトでいこう！

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■もう穴が開いているかもしれません・・・

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撮した写真をニヤケ顔で眺めながら
ゆっくりと浜を後にする。

強烈に腹が減った。
とりあえず飯でも食おう。

僕は車に戻りおもむろに真水の入った
ペットボトルを取り出した。

たった今いい仕事をしてくれた愛竿に
たっぷりと水をかけてやるのだ。

これで気持ちに区切りをつける。



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地元のスーパーは閉店時間同様
開店時間も心無しか遅い。

忙しない街の生活が染み付いた僕には少々不便に
感じるのだがこれはこれで仕方がない。

心地よさを通り越し苦痛となった空腹と
戦いながら仕方なく近くの浜をうろうろとする。

先程気持ちに区切りをつけたばかりなのに、良さげな
場所を見つけるとちょっと竿を振りたくなる。

それでも空腹には勝てず眺めるだけに
終わるのであるが僕もたいがいだと思う。

開店早々のスーパーに行き、弁当とアイスを買い
眺めの良い場所に車を停めて空腹を満たす。

この時間がまた良い。

今こうして思い出を綴っている最中にも、思い出すのは
この時の景色とこのうまかった弁当の事である。

さあ、これで腹も満たされた。

とりあえず庵に戻り
昼寝でもしよう・・・



昼過ぎに庵に着いた僕は
ひとっ風呂浴びて寝転がる。

夢の世界と現実の狭間とは
なんと心地の良いものか・・・

そしてかすかに聞こえる波の音が
僕を遠くへ連れ去った・・・



目が覚めると時計の針は
午後の３時を指していた。

僕は寝惚け眼でふと思い出したように
庵に常備してある魚図鑑に手を伸ばした。

今朝釣ったツバスを見たくなったのだ。

この図鑑は何十年も前からこの庵に置いてあり
もう穴のあくほど眺めている。

でもまたこうして釣った魚のページを見れば
新鮮に感じられるから不思議である。

ついでにパラパラと色んな魚を見ていたら
ちょいと魚釣りがしたくなってきた。

庵から車で５分も走ればいくらでも
釣りが出来る場所がある。

僕はお気楽なタックルを手に
ふらりと庵を出た。



遊んでくれたのはメバルやガシラ。

防波堤に座り、景色を眺めながらちょいと投げ
ゆっくり巻けば面白いように魚が食いついてくれた。

真剣に狙っても釣れない時は釣れないのに
魚釣りとはなんとも面白いものである。

そんな釣りをしばし楽しんだ後
僕は車に乗り込み街へ向かった。

この二日ほどろくな物を食べていなかったので
今晩は折角の庵の夜の食事を楽しもうと思ったからだ。

とは言え一人寂しくではあるのだが・・・

釣りをする時間はたっぷりと残されていたが
もう釣りをする気は全くなかった。

今日の夜は思い出の写真をめくりながら
贅沢な夜をゆっくりと過ごす事にしよう・・・




こうしてこの旅は幕を閉じるのだが
今回ほど色んな事に恵まれた旅は無い。

あれから一週間が過ぎようとしているのに
未だに釣りに行く気が起こらない。

あまり経験の無い心境である。

だけど絶対釣りはやめられない
と言い切れる。

夢の跡・・・

この言葉には二つの意味があるのだが
僕にとっては「夢の名残」

間違いなく現実の痕跡を
残して過ぎ去った。

だからもうしばらくこの素敵な余韻に
浸っている事にしよう・・・





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